一口ToHeart
MIX TASTE

Verkita de MooLing


#1 取りあえず、マルチから

「――マルチ」

「えっ!?」

オレはマルチの細い体を、背中からぎゅっと強く抱き締めた。

「……もう少し、……もう少しだけ、オレと一緒にいようぜ」

「……ひ、浩之さん」

「これがもう最後なんて、唐突すぎて、全然実感がわかねーぜ。このままだったら、オレ、多分、物凄く後悔すると思う」

「…………」

「……ずっと一緒にって、……本当はそう言いたいところだけど、そいつはムリな注文だって解ってる。だから、もう少し、もう少しだけでいい。時間を延ばせねーか?」

オレは抱き締めた腕に、さらに力を加えた。

土壇場でこんなことを言い出して、マルチを困らせてしまうのは解っていた。

だけど、このままだなんて、余りに切なすぎる。

「頼む……」

オレはマルチの頭を抱いた。

「……あっ」

「たとえ、マルチを困らせようと、それでのちのち面倒な事が起こるとしても、構やしない。少しでも一緒にいられるんなら、オレはそっちを選ぶぞ」

ぎゅ……。

「……ひ、浩之さん」

「マルチ……」

ガチャ。

その時、突然ドアが開き、外の男がオレ達に告げた。

「ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております」

…………。

やっぱり無理かな……。観覧車にこのままもう1周なんて。


#2 吉本系アメリカン、レミィ

オレが、女子更衣室の内部という刺激的光景に気を取られていた時だった。

「Freeze!」

突然、背後からそんな大声を聞いたかと思うや否や、1本の弓矢がオレの足元を襲った。

びっくりして、振り返ると――弓道着姿のレミィが弓を構え、オレを狙っていた。

「レ、レミィ!……オ、オレだ、浩之だ!」

しかしレミィは、

「女の敵……フッフッフ……覚悟は出来てるわね」

駄目だ……。レミィの奴、完全にイっちまってる。

今のレミィには、オレの姿は獲物としか認識できていないようだ。

マジかよ……。あんなもんが当たったら、オレ、死んじまうぞ!

「大人しくしてるのヨ……」

じりじりと迫るレミィ。気が付くと、オレとレミィとの距離は10メートルを切っていた。

このままオレは、“矢ガモ”ならぬ“矢人間”に……って、その前に死んでしまうわ!

――えっ、矢ガモ!?

その時、オレはこの前、初めて弓道着姿のレミィと話した時のレミィの台詞を思い出した。

『ぜーんぜんダメね。どこに飛ぶか判らないの』

そ、そうだよ……。

レミィは、構えは綺麗だけど、全然 的(まと)に当たらないって言ってたじゃないか。

それに気付いた時、さっきまでブルブル震えていたオレの脚が、不思議と元に戻った。

しめた!

オレは左に向きを変え、懸命にダッシュを駆けた。

しかし――。

「ヒュン!」と弓から放たれた1本の矢は、まさに狙い済ましたかのように、オレの心臓を見事に捕らえていた。

意識が遠のく中で、ハンターモード・レミィの勝ち誇るような言葉が聞こえる。

「フッフッフッ……ワタシ、動く的なら百発百中ネ」

レミィ……それは、PS版の設定だろ……。

――ガクッ。


#3 いいんちょは甘くない

外は雨。

オレは、今晩泊まることになった委員長をベッドに寝かせ、オレは下に布団を敷いて、そこで横になった。

「……藤田くん」

いつもと違う、委員長の声。

「……ん?」

「なあ……こっち来うへん?」

「……委員長」

委員長はクスッと笑って、

「言うとくけど、これはPS版ストーリーやから、キスまでやで」

「分かってるよ」

「じゃあ、藤田くん――」

委員長はベッドから起き上がると、オレの右手を見つめて言った。

「――その手にあるロープは何や?」


#4 琴音ちゃん、試練は終わらず……

ゴールデンウィークも修学旅行もあっという間に過ぎ、また今日から、普段通りの授業が始まる。

本来なら憂うつな気分になりそうなもんだが、久しぶりに愛する琴音ちゃんに会えることを想えば、多少は気分も軽やかになろうというものである。

琴音ちゃんを“不幸の予知能力”から解放した、あの屋上での出来事。

今想えば、なぜあそこまで大胆な行動が取れたのか、オレ自身も分からないが、やはり、琴音ちゃんを助けたい、琴音ちゃんを自らの笑顔で満たしてあげたいという想いが、それだけ強かったということなのだろう。

休み時間、オレは階段の踊り場で、琴音ちゃんの後ろ姿を見かけた。

「よっ、琴音ちゃん」

オレは明るく、彼女に呼びかけた。琴音ちゃんは振り返り、満面の笑みでオレを迎えてくれる――はずだったのだが。

「藤田さん……」

彼女の、今までの陰のある表情は変わっていなかった。

「琴音ちゃん……どこが具合でも悪いの?」

「それが……」

何か言いかけた途端、突然、琴音ちゃんが頭を抱え、その場にうずくまってしまった。

「琴音ちゃん!」

「駄目! 藤田さん、わたしから離れて!」

琴音ちゃんが叫んだ、その時。

パリン!

踊り場の窓ガラスが割れ、粉々になった破片が踊り場を覆った。

「……また……やってしまいました」

「琴音ちゃん……まさか……」

「はい……予知はなくなったんですけど……時々、念動力が抑え切れなくなって……」

こうして、物語はPS版シナリオへと続く――って、なんでやねん!


#5 志保ちゃんの野望(?)

志保「ヒロ、これってどういうことよ!」

浩之「何だよ、志保。そんなにギャーギャーわめかなくても、聞こえてるって」

志保「ギャーギャー言いたくもなるわよ。何なのよ、あのPS版のエンディング」

浩之「いいじゃねーか。オープンカーに乗って、颯爽と登場。どこが不満なんだ?」

志保「大いに不満よ! 一度はヒロをあかりに譲って遠くへ離れたはずが、結局は未練たらしくヒロを忘れられなくて、とどのつまりがアメリカでただのパパラッチなんて、こんなのあたしじゃないわよ!」

あかり「まあまあ、志保。そんなに興奮しないで」

志保「何よ、あかりまで。……ううっ、あの友情を貫いて自ら身を引いた、今や世界をまたにかける国際派フリージャーナリストの長岡志保はどこへ行ったのよーっ!」

浩之「知るかよ。現実的に考えたら、パパラッチの方が志保にはお似合いだ」

志保「キーーッ!……いいわよ。あたしには最終兵器があるんだから……」

浩之「何だよ、最終兵器って」

志保「簡単な事よ。要するにシナリオを強引にPC版に持っていけばいいのよ」

浩之「……はあっ?」

あかり「志保……それってまさか……」

志保「ふふふっ……さすがは あかり、よく気が付いたわねえ」

あかり「駄目ーっ! 浩之ちゃんはあたしの!」

志保「別にヒロを奪おうってんじゃないわよ。ただ、一晩ヒロを借りるだけだから」

浩之「一体何の話だ?」

志保「鈍いわねえ、あんた。あたしとヒロのHシーンに突入しちゃえば、嫌でもPC版になるじゃない」

浩之「……何でそうなる?」

志保「するの! この魅惑のナイスバディで」

浩之「だから、オレには あかりが――」

志保「いいじゃない。お礼にオープンカーあげるからさあっ♡」

浩之「そんなもん……って、おい! オレを車に引きずり込むなっ!」

志保「つべこべ言わない! というわけで、ラブホテルへレッツゴー!!」

一人残された あかり「あーーーん……志保の馬鹿ーーーっ!!(涙)」

――何のことはない。愛よりも友情を、友情よりも欲望を選んだ志保ちゃんなのであった。


#6 浦科……じゃない、雛山理緒のウラ

夜の河川敷を歩く、オレと理緒ちゃん。

「ひどいですよね……。いくら隠れヒロインだからって、バトルッチ一つで体を許すほど、わたしは尻軽じゃありませんよ」

PC版シナリオに不満をぶつける理緒ちゃん。

「ははっ、そうカッカするなって」

「でも……やっぱり体を許すなら現金でないと」

「……は?」

「河原で野外プレイなんて燃えるわよぉ。でもって、通行人から見物料をガッポリ稼いで……。あっ、藤田君、協力してね♡」

「…………」

さすが理緒ちゃん。金のためなら手段は選ばず……。


#7 こんな魔法なら……、あっ、いや、そのー……(汗)

「先輩……?」

「…………」

来栖川先輩はオレのそばに近寄ると、耳元でぽそぽそとささやいた。

「え? 儀式をしてもいいですか……って?」

こくん。

「儀式……って?」

「…………」

「えっ? 二人の愛が周りに祝福される、魔法の儀式?」

こくん。

「……うん。やろうぜ、儀式」

オレは言った。

ゆらめく炎。

そのほのかな明かりを映して輝く、金属の魔方陣。

二人はその中央に立ち、生まれたままの姿で抱き合う。

オレは先輩を貫く。

先輩から流れる血。

そして、先輩はオレの精を受け入れる。

時が満ち、先輩の懐に芽生える、愛の結晶。

この事実を前にして、二人の愛を否定できる者はいない。

……って、これのどこが魔法なんだ!?

(しかも、描写が18禁ギリギリだし……)


#8 葵ちゃんの服装の謎に……全然迫ってねえ(笑)

浩之「なあ、葵ちゃん」

葵「何ですか、センパイ?」

浩之「葵ちゃんって、PC版じゃ、練習も試合も制服だったよなあ。確か、着替える場所がないからって」

葵「えっ、ええ……まあ……」

浩之「それが、何でPS版じゃ体操服なんだ?」

葵「あっ、そ、そのー……やっぱり、制服のままじゃ……や、やっぱり、アレ、ですから……」

綾香「あら、私は浩之とのボクシング対決は制服でやったわよ。もちろんPS版」

葵「あっ、綾香さん……」

浩之「それに、体操服の方がかえってヤバくないか?」

葵「何がですか?」

浩之「いや、体の露出度が」

葵「……あ」

綾香「それに葵、エクストリームの試合は、制服スタイルでやるんだけど」

葵「えっ!? そうなんですか、綾香さん」

浩之「あ、綾香……それって、マジか!?」

綾香「当然じゃない。エクストリームは、いわば実戦格闘技なんだから、出来る限り普段着に近い格好でやるのがルールなの。それに――」

浩之「それに……何だ?」

綾香「その方が、視聴率も上がるでしょ?(笑)」

浩之〈……ひょっとして、エクストリームって、かなりヤバいイベントだったのか?〉


#9 PS版あかり編、あのラストシーンの真実(?)

志保「ねえ、あかり……あの時、ヒロとシたの?」

あかり「(ゴチンっ!)……し、志保……急に何てことを」

志保「いいから答える!」

あかり「そ、それは……PC版では、浩之ちゃんと……」

志保「そっちじゃなくて、PS版の方」

あかり「志保、PS版でデキるわけないじゃない! だからあの日、あんな気まずいことに……」

志保「ふーん……それじゃ、PS版のラストシーンで、ヒロの口元が妙ににやけてたのは何だったのかなー?」

あかり「えっ? そ、そうだったっけ……」

志保「あたしはてっきり、あれはあかりとヒロが、実はプレイヤーに隠れてヤってましたってのが、うっかり顔に出ちゃったのかと――」

あかり「あ、あれは、屋上でのラストのあと――」

志保「あと……?(ニヤリ)」

あかり「……そ、その……私、あのあと……浩之ちゃんの家に……」

結局あかりは、あのラストシーンのあと、浩之の部屋で抱かれたことを、志保に白状させられてしまったそうな。

ちなみに、結局その日は浩之が立たず、「はじめて」は後日仕切り直しになったことも、お約束であった。


#10 ねこっちゃ、再び

「――どうしたの、琴音ちゃん。元気ないじゃない」

「藤田さん……」

「頑張って念力のコントロールも出来るようになったし、浩之(子犬の方)も退

院したんだ。もう琴音ちゃんを苦しめるものは、何もないじゃないか」

「わたしもそう思ってました。でも……」

そんなことを話しながら、オレと琴音ちゃんが階段を下りようとした時だった。

「藤田さん、危ない!」

急に、琴音ちゃんがそう叫んだ。

「えっ、何が――」

そうオレが言いかけた途端、オレの右足のくるぶしが何かに掴まれたような感覚を覚え――気が付いたら、オレは階段を転がり落ちていた。

「わたし……また……」

「琴音ちゃん……これって、まさか……」

「分からないんです! 突然嫌な予感がして、そうしたら、それが本当になって……。わたし、念力を使ってるつもりなんてないのに……」

――振り出しに戻ってるじゃないかあっ!


#11 最後は――もいっぺん、マルチ

人の姿もすっかりまばらになった、夜の遊園地。

その真ん中に、しっかりと抱き合う、オレとマルチがいた。

「マルチ……いいか?」

マルチが研究所に帰らなければならない時刻まで、あと1時間と少し。

それを過ぎれば、もうオレは、マルチと二度と会えない。

だから――オレは、マルチを抱きたかった。

オレがマルチを本当に愛していることの証しのために。

オレとマルチとの、確かな絆を得るために。

オレは、マルチを求めた。

「……はい」

マルチも同じ気持ちだったのだろう。

幼い顔を真っ赤にしながら、でもはっきりと、そう答えた。

ただ、マルチは続けて、
「でも……もう浩之さんの家に戻る、時間的余裕は……」

その通り。ついでに言うと、もうホテルを探している余裕もない。

「場所ならあるさ」

しかし、オレはにやりと笑顔を見せながら、ある所を指差した。

「……えっ!?」

「構うもんか。あれも立派な個室だ」

それだけ言うと、オレはマルチの手をしっかりと握り、目的地まで駆け出した。

ちなみに、目的地とは――昼間に乗った、あの大観覧車である。

「あ、あの……浩之さん!」

オレは、手早く二人分の切符を買うと、マルチを観覧車のゴンドラに半ば強引に押し込み、自らも乗り込んだ。

やがて、ドアは係員の手により、ガチャンと閉じられた。

こうなれば、ここはもう、オレとマルチの、二人だけの世界――。

…………。

そして観覧車が1周する間に、オレは前儀に始まり、2ラウンドを余裕で済ませた後……何と「ふきふき」まで こなしてしまった。

いやあ、ヤれば出来るもんだなあ(笑)。

「はうぅぅっ……浩之さん、早すぎますぅ~~~っ(>_<)」

――完――


あとがき

おかしいなあ……(笑)。

PS版ToHeart全クリア記念として、「もしPC版ストーリーとPS版ストーリーがごちゃまぜになったら」という趣旨で書き始めたはずなのに、ただの下ネタ オンパレードになってしまった……。


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