「――あかり~、まだ見付からないのか?」
「うーん……今年はおせち料理、本格的なのを作ろうと思ってんだけど、どうしても見付からない材料が」
「なあ、一度家まで戻らねーか? オレもう、ここまで買ってきた食材の山を抱えたままで、腕がしびれてきた」
「それもそうだね。それじゃ浩之ちゃん、一旦帰ろうか」
「それにしても……何で今年に限って、オレんちの おせちなんて作ろうって気になったんだ?」
「何でって……私の自信のおせち料理を、浩之ちゃんに食べて欲しいから――って理由じゃ駄目?」
「いや……充分だ。充分だけど……あかり、今思いっ切り恥ずかしい事言ってるぞ」
「え?……で、でも、本当の事だから」
「ああ、分かった分かった。とにかく、一旦帰って、出直してこようや」
「うん」
*
「――出来たよ、浩之ちゃん」
「おっ、待ってました、年越しそば」
「うん。おせち料理も出来たし、後は浩之ちゃんの部屋で、一緒に除夜の鐘を聞くだけだね」
「月の光に照らされて、揃って生まれたままの姿で抱き合いながら、か?」
「……もう、浩之ちゃんのえっち」
「しないの?」
「……する」
「わあ、あかりちゃんのえっち」
「浩之ちゃん!」
「あかり、そばが冷めるぞ」
「えっ? う、うん……」
*
「ねえ、浩之ちゃん」
「んっ、何だ?」
「今年も、今日で終わりだね」
「ああ……そうだな」
「おばさんたち、何で帰って来ないの? 年末なのに」
「親父とお袋か? 今年は急ぎの仕事が入っちまって、年末も年始もないって言ってたな」
「ふーん、それって、何か気の毒だねえ」
「バーカ。あんな台詞、本気に取る奴があるかよ」
「えっ?」
「オレとあかりのことは、とっくにバレちまってるんだ。だから、親父・お袋なりに、オレ達に気を利かせて家を空けてくれたんだよ。仕事なんて言って、本当はどっか温泉にでも行ってんだろ」
「あっ……そうだったんだ」
「お袋なんか、しょっちゅう言ってるぜ。『早く初孫が見たいわ』だって」
「それ、うちのお母さんも。『マタニティグッズが必要になったら、早く言ってね』って」
「あ~あ、親の理解がありすぎるってのも考え物だな。何かこう、変にプレッシャーがあってさ」
「でも、猛反対されるよりはいいでしょ?」
「……それもそうか」
「――浩之ちゃん?」
「ん?」
「考えたら、今年の正月には想像も付かなかったよね? 私達がこんな会話してるなんて」
「あん時は、まだ、ただの幼馴染みだったからな」
「そうだね。……でも、私達って、そんなに変わったのかなあ?」
「大変化だろ? 友達から恋人だぜ。それもsteadyな」
「そのわりには、浩之ちゃんは、相変わらずの浩之ちゃんだし……」
「あかりだって、相変わらずの あかりだろ?」
「でも、それって……」
「別にいいんじゃねーか」
「えっ?」
「恋人、即大人ってわけにはいかねーよ。時間はたっぷりあるんだ。焦らずに、ゆっくりと大人になればいい。それに」
「それに?」
「オレは、今のあかりが、好きだぜ」
「……浩之ちゃん」
「あかりは、どうなんだ?」
「……私も……今の浩之ちゃんが……」
「だったら、それでいいんじゃねーか」
「……うん」
「十何年と付き合ってきて、やっとここまで来れたんだ。これからも、お互いのんびりといこうぜ。なっ、あかり」
「……うん、浩之ちゃん」
*
「――あかり」
「何?」
「来年も、よろしくな」
「私こそ、よろしくね、浩之ちゃん……」
――完――
今回は、まともな ほのラブ物……のはずですが、ちょっと あかりがHですかねえ。
まあ、“はじめて”がアレですから(何せ第2ラウンドが)……。