マルチ、最後の夜

Verkita de MooLing


マルチの学校での運用テストの最終日、「恩返し」と言って家に来てくれたマルチがいよいよ研究所へ帰ろうという時に、オレはマルチに抱き着いて止めた。そして――。

「……分かりました。もう少しおそばにいます」

「ホ、ホントか!?」

「……はい」

オレが両手を解くと、マルチはこっちを向いた。

「……研究所の方にお願いしてみます。大好きな人と、もう少し一緒にいさせてくださいと」

「マルチ……」

ピンポーン。

ピンポーン。

騒がしく鳴るチャイムの音。

「……じゃ、じゃあ、運ちゃんの方にも謝って帰ってもらわねーとな」

「はい」

マルチは笑顔でうなずいた。

オレは、運転手に帰ってもらおうと、玄関のドアを開けた。ところが、ドアの向こう側にいたのは――。

「……かかったなあ~」

それは、タクシーの運転手の制服を身にまとった――あかりだった。

「あ、あかりっ!?」

オレが呆然としている間に、あかりはすばやくマルチを後ろから羽交い締めにして、

「メイドロボの分際で、浩之ちゃんのモノになろうったって、そうはいかないわよ!……さあマルチちゃん、はやくおうちへかえりまちょーねえー」

「あうぅっ……浩之さあぁ~~ん!」

「マ、マルチーっ!」

オレの叫び声も空しく、マルチは玄関の向こう側へ消えた。

――それ以降、オレはマルチと二度と逢うことはなかった。

――完――


あとがき

……全国のあかりすと及びマルチストの皆さん、ゴメンナサイ。

本サイトのSS第1号がこれかい!(ナサケナイ……)


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