今、俺の目の前に転がっている、のっぺらぼうの人形。
何の気なしに つい ふらふらと立ち寄った、駅の裏手にある奇妙なアンティークショップで、不思議な魅力をたたえた女主人に薦められるまま買ってきた物だ。
昔の漫画にあったのと同じ、あのコピーロボット――姿も能力も自分と全く瓜二つで、しかも主人である自分には絶対服従で、面倒な事は全て任せられる“人形”――ということだったが……。
まあとにかく、嘘か本当か、実際に使ってみれば分かる事だ。
漫画通りなら、この鼻の所にある赤いボタンを――。
「……あれ?」
そのボタンを押そうとした時、俺は大変な事に気が付いた。
よく見ると、この人形には鼻だけでなく、へそにも同じようなボタンがあるではないか。
何てこった。俺はどのボタンがどうかなんて聞いてないぞ。
……どうする?
------------------------------ 1. 鼻のボタンを押す →2. へそのボタンを押す 3. 店に戻って説明を受ける ------------------------------
俺は一か八か、へそのボタンを試してみることにした。
何、それで駄目だったら改めて鼻のボタンを押してみればいい。
ポチッとな。
…………。
…………。
…………。
……おかしい。
人形は、何の変化もない。
コピー機能でないなら ないなりに、何か変化があっても よさそうなものだが。
俺はもう一度、へそのボタンを、さっきよりも しっかりと押した。
…………。
…………。
…………。
やっぱり、何の変化もない。
やけになった俺は、へそのボタンを何度も連打した。
すると――人形の中から、音声が流れてきた。
「ただ今ご使用になったボタンは、現在使われておりません。鼻のボタンを押されるか、店に戻って今一度 説明を受けられますよう、お願いします。
繰り返します。ただ今ご使用になったボタンは……」
…………。
これを聞いて、俺はある重大な事実を思い出した。
このSSの作者が持っている『痕』が、あの おまけストーリーを削除した修正版(Ver. 2.02)だったことを――。
――完――
実際の修正版では、「へそのボタンを押す」という選択肢自体が削除されています。念のため(笑)。