※ 配列は、基本的に原作ストーリー順です。また、各話は互いに独立しており、各話間の設定・ストーリー上の関連は一切ありません。
「おい、そこのバギー! 攻撃されたくなかったら、止まるんだ!」
シモンは自ら操るバイクを、荒野を爆走する猫耳娘のバギーの横に着けた。
しかし、強盗の真似というが、これって強盗そのものだと思うが。
「止まれ! 止まれってのに!」
剣を振り上げ威嚇するシモン。しかし、運転手は完全にシモンを無視して荒野をひた走る。
「いい加減に車を止めやがれ、この猫耳!」
すると、運転手は――。
「うるさいにゃっ!」
「うわっ!!」
いきなりバギーを横滑りさせ、勢い良くバイクに「ガツンッ!」と体当たりしてきた。
バイクから投げ出されたシモンは、砂煙を上げながら遥か遠くへと走り去っていくバギーを、ただ呆然と見送るだけだった。
――助かる可能性をのっけから掴み損なったシモンは、そのまま荒野のど真ん中で、のたれ死んだという。
やっとのことで巨大モンスターを追い払い、ほっとしたのも束の間。
俺は、後方から駆け付けてきた女戦士ジゼルに、槍先を突き付けられている。
「怪しい奴! あんた、山賊か何かでしょ!?」
「ち、違う!」
「いかにも食い詰めて、そういうことしそうな顔してるもの! さあ、白状なさい!」
「だから違うというにっ! ……お、おい、ミイ、お前からも」
この直後、俺は頼る相手を間違えたことを、激しく後悔した。
「うにゃっ! このお兄さんは、ミイのバギーに強引に飛び乗って、有り金やら荷物やらを一切合財奪おうとしたにゃ! その上、ミイを身包みはいで、あわやミイの純潔まで……っ!」
…………。
ミイの虚言癖の犠牲(?)となった俺は、今、帝国刑務所の中にいる。
「だから、俺は強姦なんかしてないって」
「ほう。つまり強盗未遂は認めるんだな」
「トホホ……」
アラハバクに着いた俺たちは、早速、長老の歓待を受けた。
「我がコロニーへ、ようこそいらっしゃいました」
ぺこりと軽く目礼し、長老がいやらしい笑みを見せる。
そして長老は、ふと後ろを振り返り誰かを呼んだ。
「エミリア、ちょっと来なさい」
「あ、はーい!」
ぱたぱたと、誰かが部屋に入ってくる。
「ご主人様、お呼びですか?」
――“ご主人様”?
「こりゃ、お客様の前では長老と呼ばんか。関係がバレてしまうではないか」
小声で彼女にささやく長老だったが、はっきり言って、俺たちには丸聞こえであった。
「あ! ごめんなさい。……長老、お呼びですか?」
「うむ、いい機会じゃから、お前を皆さんに紹介しておこうと思ってな」
そう言って、じじい……いや、長老は俺たちに向かって彼女を示し、言った。
「私の愛人……もとい、牝奴隷……いやいや、養女で、エミリアと申します。皆様のご滞在の間、彼女が身の回りのお世話をさせて頂きます」
……前言撤回。やっぱり“じじい”でいい。
「よろしくお願いします」
ぺこり、と頭を下げる。俺たちも釣られて頭を下げる。
「ささやかではございますが、淫席……じゃなかった、宴席を設けさせて頂きました。今夜はどうぞ、エミリアで存分にお楽しみ下さい。グヘヘヘ……」
「…………」
――初めて対面した長老は、見かけ通りのエロじじいだった。
すっかり夜も更けた。
宴席をちょっと抜け出した俺は、コロニー中央の泉の岸辺にある洗い場で、酔い覚ましに水気を含んだ冷たい風に当たっていた。
やがて、エミリアやジゼルも洗い場にやって来た。
「ジゼル、来賓が宴席を抜け出してきて、いいのかよ?」
「いいのよ。どうせ、イレーネさんと長老さんの話は難しくて分かんないんだもん。若い者は若い者同士、楽しくやりましょうよ?」
「うふふ、ジゼルさんったら。イレーネさんが聞いたら怒るんじゃないですか?」
「聞こえてないからいいの。あー、若いと言えば、ミイはどこ行っちゃったのかしら」
「ミイちゃん、いなくなったんですか?」
――などと俺たち3人が他愛もない会話をしていた時だった。
「にゃーっ!」
突然、そんな声が足元から聞こえたかと思った瞬間、俺たちが立っていた洗い場の陸地側が大きく跳ね上がった。
「わっ!」「きゃあ!」「やん!」
それぞれ驚きの声を上げる俺たちを、でっかい滑り台と化した洗い場は容赦なく泉へと「ドボーン!」と投げ込んだ。
やがて、洗い場の下からミイが這い出てきた。
泉から顔を出した俺の目に、洗い場の片側でビヨンビヨンと揺れる大きなバネが映る。歯止めを外した瞬間、洗い場自体がバネの力で大きく跳ね上がる仕掛けになっていたわけだ。
「大成功にゃーっ! みんな、驚いたかにゃーっ! 酔いは覚めたかにゃーっ!」
などとほざきながら、ミイは濡れネズミとなった俺たちを見やり、勝ち誇ったように飛び跳ねていた。
「ああっ、覚めた覚めた! というか、いつの間にこんな仕掛け作りやがったっ!」
「私たちの仕事を、手伝って頂けませんか?」
「仕事……?」
イレーネからの突然の申し出に、俺は戸惑った。
「私たちの仕事は、辺境異民族と帝国との親交を深めることと、もう一つあるんです」
「というと?」
「この辺りには、まだ知られていない旧世界の遺跡がたくさんあります。その発掘調査です」
「もし俺が断ったら、どうなるんだ?」
するとイレーネは、表情を曇らせて、言った。
「事件は何ら解決されません。そして、電波使いの発する毒電波により、卒業式は乱交パーティーへと変わり果てます」
――そりゃ『雫』だろうがっ!
最初に入った遺跡で、やけにけばけばしい柄の壷を見付けたので、早速ミイに鑑定してもらった。
「ミイ、どうだ?」
「うーん……これは、そんなに価値が高くないにゃ」
「おいおい、手厳しいな」
そこへ、イレーネがやって来た。
「ミイさん、あなた、案外不勉強ね」
「イレーネ、この壷がどうかしたにゃ?」
「その壷はね、旧世界末期の時代、今のお金に換算すると3万G以上で売られてたものよ」
これには、俺もミイも驚いた。
「さ、3万Gだとっ!?」
「そ、それ本当かにゃ!?」
「ええ。とある新興宗教が資金稼ぎのために信者を使って、『幸運を呼ぶ壷』と称して一般市民にそれくらいの高値で詐欺同然に売り付けてたのよ。当然、そんな壷に御利益なんてあるわけなく、買ってしまった人は、良くて家庭崩壊、中にはこれが元で一家心中なんて所も――」
「ミイ、俺、やっぱり売るのやめるわ。なんか知らんが、この壷、叩き壊したくなってきた」
「うん、ミイもそう思うにゃ」
「うーん、おかしいですね……」
バン、バン、と、イレーネが機械をいじりながら、ぶつぶつ言っている。
「さっきから、何してるんだ?」
「あっ、シモンさん」
俺の存在に気付いたイレーネが、こっちを向いた。
「ラジオの調子が悪いんです。困ったわ……」
イレーネがいじっていた「ラジオ」とは、この間、俺たちが遺跡で見付けた“超骨董品”だった。
「昔から、こういうのは、叩けば直ると相場が決まっているんですよ」
いつの間にか、後ろに来ていたエミリアが自信満々に言ってのける。
「叩くの? ねえ、それ、あたしにやらせて?」
一緒にいたジゼルまで、話に乗ってくる。
「駄目ですってばーっ!」
まるで破壊神にでも遭遇したかのように、イレーネは悲壮な声を上げる。
「みんな、何やってるにゃ?」
そこへ、「救いの神」登場。
「いや、イレーネのラジオの調子がおかしいっていうから」
すると、ミイは、
「それだったら、ミイに任せるにゃ!」
と、イレーネからラジオを取り上げた。
「良かった……。一時はどうなることかと」
ほっとするイレーネ。あとで知ったが、元々ミイは、こういう機械いじりが得意だそうだ。
しかし――。
「えーと、多分ここの真空管が……あれっ? それとも、この配線かにゃ? それとも……」
手際良く、ラジオを分解していくミイ。
そして、気が付くと、ラジオは完全にバラバラになってしまった。もはや復元不可能なほどに……。
「にゃはは……これはもうお手上げだにゃ」
「ほらあ、やっぱり私が叩いた方が、良かったじゃないですか」
「そ、そんな~~っ!」
――技術を知るものが、必ずしもいい仕事をするとは限らないという、実例であった。
「昔から、こういうのは、叩けば直ると相場が決まっているんです」
そう自信満々に言うと、エミリアはラジオに向かって、手刀を振り上げた。
「ちょ、ちょっと待って! そんな大雑把な……」
あわてて止めるイレーネ。
すると、ジゼルまでが、
「このラジオを、叩いて直すの? ねえ、それ、あたしにやらせて?」
とまあ、ラジオをどっちが叩くかで、二人が張り合いだした。
「駄目ですってばーっ!」
まるで破壊神にでも遭遇したかのように、イレーネは悲壮な声を上げる。
「みんな、何やってるにゃ?」
そこへ、ミイが露店から駆け付けてきた。
「あっ、ミイさん。ちょっと、このラジオが――」
ミイの姿を見て、ほっとするイレーネ。どうやらイレーネは、ミイを信頼しているらしい。
しかし、その信頼は、直ちに裏切られた。
「それだったら、思いっ切り叩くのが一番にゃ」
「……へっ?」
「ミイに任せるにゃ。せーのっ、にゃ~~っ!!」
ミイは気合いを込めて、どこから取り出したのか、ラジオに向けて100tハンマーを振り下ろした。
…………。
「あれっ、どうしてかにゃ?」
「どうもこうもあるかっ! せっかくの骨董品が木っ端微塵じゃないかっ!」
「ひぇ~~んっ!!」
遺跡のプールでエミリアとジゼルが水浴びをしていたところへ、ペンペン来襲!
まあ、二人の悲鳴を聞いて駆け付けた俺が、あっさりと倒してやったのだが――。
「どうした、エミリア?」
エミリアは、顔を真っ赤にして、じっとうつむいていた。
「シモンさん……。見たでしょ、私の裸?」
「そ……そりゃ、まあ……見たというか、見えたというか……」
しょうがないだろ、あの状況では。
「あーん! 私、もうお嫁に行けませ~ん!」
「エミリア、そ、そんな大げさな……」
ジゼルがなだめるが、エミリアは泣きやみそうにない。
「分かった、エミリア。俺がお前を嫁にもらってやる」
「シモンさん……!」
「責任を取るなんて言い方はしたくないが……俺、エミリアのことが好きだから」
「シモンさん……わ、私もシモンさんのことを……」
「エミリア……」
「シモンさん……」
「ちょっとーっ! こんな序盤で、何を勝手にヒロインを確定させてんのよおっ!」
地団駄踏んで悔しがるジゼルだったが、エミリアの意外な策士ぶりにしてやられたと気付いた時には、もう遅かったようだ。
まあ、俺は別にエミリアで構わんが(笑)。
俺たちが、遺跡から「モンスターの卵」を持ち帰った、その日の夜。
がさりっ。
「……ん?」
外で誰かが草を踏む音を耳にし、俺は目が覚めた。
「こんな時間に、何だ……?」
窓から首を出す。
すると、長老と村人たちが、あの卵を保管先から持ち出し、コロニーの外に運び出そうとしていた。
俺は慌てて飛び起き、村人たちを追いかけた。そして追い付き、俺は村人たちを問い詰めた。
「おい、何をしてるんだ、あんたら」
村人を代表して、長老が悠然と答えた。
「決まっておろう。コロニーの外なら、たとえ堕天使ベヒモスが暴れても、コロニーに害を及ぼす心配はないからのう」
えっ?……いや、そういうことをされると……。
「元に戻せ! そんなことされたら、ストーリーが進まないじゃないかっ!」
「御免こうむる! 3度もコロニーを破壊された挙げ句、ルシファーに焼き殺されて、もうこりごりじゃわいっ!」
――俺たちの冒険は、既に4周目に入っていた。
「エミリアお姉ちゃん!」
アラハバクをあとにしようとする俺たちの元に、とてとてと、ルカが走ってきた。
「あら、ルカ……どうしたの?」
「これ……」
ルカが懐から何かを取り出し、エミリアに見せる。
「あら……またピル?」
この間エミリアがルカから受け取ったのと同じ、経口避妊薬だった。
「それから……これは、シモンお兄ちゃんに」
「俺に?」
そしてルカは、俺にコンドームを渡した。
「うん、向こうでもエミリアお姉ちゃんと頑張ってね」
「…………」
「…………」
――何を頑張れと言うんだ、このマセガキはっ!
それは、シモンたちが帝国へと針路を取り、アラハバクをほんの少し離れた時だった。
アラハバクの上空で、何かが「キラッ!」と光るのが、エミリアの目に映った。
「何でしょう? 今、何かが光ったような」
「流れ星じゃないの?」
と、ジゼルが応じた。
そして、また光るのがシモンにも見えた。2度、3度と。
「違うな……。光が動いてない」
「旧世界末期に造られたという『人工衛星』の生き残りでしょうか?」
イレーネがそんな予測を述べる。そして、それは当たっていた。
しかし、その光の明滅が、実はルシファーを召還するための信号であったことを、地上の誰一人として知る者はいなかった。
ごく一部、アラハバクの攻撃に直接関わった人たちを除いて――。
そして、ルシファーはアラハバクの遥か上空に現れた。しかし真夜中ゆえ、その黒い姿を地上から見ることは出来ない。
しかし、上空を旋回するルシファーの様子がおかしいのを、「召還の主」は気付いていた。
「……スターシードが足りなかった。ルシファーをうまく制御できない」
そして、異変を「悪い予感」という形で感じたエミリアが、
「危ない! みんな逃げて!」
と叫んだ、まさにその直後だった。
ルシファーは、「光の槍」をアラハバクに向けて放った。しかし、制御不能状態に陥っていたルシファーは、攻撃目標をわずかに外していた。
そして、「光の槍」は真っすぐに、シモンたちのいる場所へと伸びた――。
「光の槍」はアラハバクにいた多くの人々も目撃した。しかし、その光の先に誰がいたのかを知る者は、誰もいない。
そして、思わぬ形でシモンたちを失った世界が、その後どうなったかを知る者も――。
最強……いや、最凶の堕天使・ルシファー、目覚める――。
「フフフ……かつて、世界の7割を焼き滅ぼしてやった、この俺様にとって、あんなちっぽけなコロニーを消し去るなど、赤子の手をひねるよりたやすいわ。
アラハバクのクズ共よ。このルシファーの手によって滅ぼされることを、名誉に思うがいい。――食らえ!」
上空を舞うルシファーが、アラハバク目がけて「光の矢」を放たんとしたその時。
轟音と共に、地上から打ち出された砲弾が、ルシファーを捉えた!
「グアアッ!!……な、なぜ……!?」
予想外の攻撃を受けたルシファーは真っ逆さまに墜落し、地響きと共に地上へと叩き付けられた。
体を起こしたルシファーが眼前に見たもの。それは、龍魂砲を手に悠然と立っていたエミリアたちだった。
「馬鹿なっ! この俺様が、どうして砲弾如きにっ!?」
「物攻MAXの私が、これ以上、アラハバクのみんなをむざむざと殺されるのを黙って見ていると思いますか? さあ、みんな、トドメよっ!」
「ま、待て、お前ら……シ、シナリオがちが――グギャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
シモンたちの冒険は、とうに10周を超えていた。いや、既に「冒険」じゃないだろ(笑)。
停泊地となったオアシス。俺とエミリアは、そこで眠れぬ夜を共にしていた。
「あ」
その時、エミリアが湖の真ん中あたりを指差して、言った。
「光ってる……」
「……ああ、蛍だな」
2匹の「蛍」が、ゆらゆらと飛び回りながら、こちらへとやって来る。
「……蛍は、死んだ人の魂なんだ、って……」
「ん?」
「お爺様が言ってた。死んだ人の魂が、この世に残した人の様子を見に来てるんだって」
「…………」
それじゃあ、あれは、俺の妹……。
「ルカや、お爺様が、あの中にいるのかな……」
「そうかも知れないな……」
いつのまにか数が増えて、俺たちを取り囲むような光の乱舞。神秘的だった。
そのうち、それぞれの光の玉からゆらゆらと青白い炎が上がり……えっ?
気が付くと、俺たちの周りには「蛍」の群れに混じって、人の影が一つ、また一つと……。
『あつい……たすけてくれ……』
『エミリア……エミリア……』
『お姉ちゃん……あついよ……くるしいよ……』
『さむいよ……お兄ちゃん……』
「って、こりゃ蛍じゃなくて人魂じゃないかっ!」
「きゃーーっ! みんな成仏して下さーーいっ!」
ビザンティアに来た俺たちは、早速ミイの家でもある工場に案内された。
「ミイが世話になってるみたいだな。俺はテオドール、ここらじゃ一番の職人だ」
ミイの育ての親でもある親方が、そう言って、俺たちにぺこりと礼をした。
「自分で言うと嫌味にゃ、親方」
「事実なんだから、しょうがねえ」
「確かに事実にゃ。帝国にある機械の中には、親方にしか作れない物も多いのにゃ。
そうした機械は、親方が必ずピタリ1年後に故障するように仕込んであるにゃ。でもって、修理できるのは親方しかいないのにゃ。だから、修理費だけで親方はぼろ儲けなのにゃ。
ほんと、親方は帝国で一番、商売上手な親方にゃー」
「人聞きの悪い事、言うんじゃねえ!」
ボカッ!
「ううっ……でも事実にゃ」
「違う! 1年後じゃねえ。2年後だっ!」
……ひょっとして、帝都って、こんな奴ばっかりかっ!?
ミイの案内で、ビザンティアを回るシモンたち。
やがて、帝都の北方、吊り橋の向こうにそびえる宮殿に着いた。
「ここが宮殿にゃ~!」
「うわあ~、大きい、立派です~」
「凄いな……確かにでかい」
「帝国の中心、皇帝陛下が住んでいらっしゃる所よ」
そう言ったジゼルに、エミリアが聞いた。
「皇帝陛下って、どんな方なんですか?」
ジゼルは、少し間を置いてから、こう答えた。
「……まだまだ子供なのに、国民を重税で苦しめて、自分は酒ばかり飲んで遊び呆けているわ、妾は6人も囲うわ、夜になると酔客を辻斬りするわ、逆らう者はその場で銃殺するわ――とにかく、将来の暴君だって言われてるの」
「…………」
――以下、後日譚。
「……そうか。姉さんは僕のことを、そんな風に見てたんだ」
「うううっ……、ほんの冗談じゃないのよお。だから、フランツ、そんなにいじけないでえ!」
「シモン、あんた、ご飯食べた?」
街で出会ったジゼルに、俺はそう聞かれた。
「いや、まだだ」
「この先に、新しいレストランが出来たのよ。ちょっと高い所だけど、一緒に行かない?」
「新しいレストラン」というと、この間、ビネガーを高く買い取ってくれた――店長曰く、帝国料理には調味料としてビネガーが欠かせないのだが、なぜか切らしていたらしい――あの店のことだろう。
お礼に食事1回分サービスしますと、店長からも誘われているのだが。
「レストランか……。でも、ああいうとこって、うるさいんじゃないのか? テーブルマナーとか」
「大丈夫よ。あたしが一から指導してあげるから。じゃあ、行きましょ!」
「えっ、あ、おい!」
こうして俺は、ジゼルに強引にレストランに引っ張られていった。
…………。
「なあ、ジゼル?(ングング)」
「ん? なに、シモン(モグモグ)」
「いや、さっきからお前と同じように食べてんだがな(ガツガツ)」
「いいじゃない。それで(ムシャムシャ)」
俺たちは、ナイフとフォークを脇に置いて、出された料理を片っ端から手掴みで口にかき込んでいた。
「本当に、これが帝国流テーブルマナーなのか!?」
「そうよ。ほら、周りのお客さんも、別に気にしてないじゃない」
――実は周りは皆ジゼルの正体を知ってて、でもって、さすがに皇族相手に注意するのははばかれるため、みんな揃って見て見ぬ振りをしていただけだったと知ったのは、かなりあとの事である。
「やあ、エミリア」
手提げカバンをひじから提げて帰ってきたエミリアに、俺は声をかけた。
「あ、シモンさん!」
「おっ、今日は魚料理か」
カバンの中をのぞくと、見たことのない魚が一杯詰まっていた。
「はいっ、安かったので」
赤潮の問題が解決したことで、魚が再び市場に出回るようになったお陰だろう。これまでの価格高騰の反動で、魚は一挙に値下がりしていた。
「シモンさんは、今晩は何を食べるんですか?」
「そういえば、もうそんな時間か。……何か、適当に外食でもするかな」
「それだったら、私の部屋に食べに来ませんか?」
「えっ?」
「あんまり安かったので、ちょっと買いすぎちゃったんです。一度にこんなに食べ切れませんし、なま物ですから、余り置いておくわけにも……」
本当は俺にごちそうしたくて、こんなに買ったんじゃないのか?――などと考えるのは、少し自惚れに過ぎるだろうか。
まあ、何れにせよ、エミリアからのせっかくの誘いを断る理由はない。
「そうか。それなら、頂いてもいいかな?」
こうして、俺はエミリアにお呼ばれすることになった。
「はい、出来ました~♪」
「おお……」
あの一杯の魚が、白くて綺麗な刺身になって大皿に盛り付けられて出てきた。
「食欲が湧いてきた……」
どんなにクールを気取っていても、飯を食う時だけは子供のようになってしまうのが男ってもんだ、と俺は思う。
「どうぞ、召し上がれ♪」
「おう! 頂きます!」
俺は、文字通り貪るようにそれを食った。
「おいしいですか?」
「うん、うまい! 魚を生で食うなんて初めてだが、結構いけるんだな」
本当にうまかった。獲れたてで新鮮だからということもあるが、やはり料理人エミリアの、真心と思いやりだろう。
「うふふ、ありがとうございます」
「こちらこそ」
こうして、その日は楽しい夕食のひとときを過ごしたのだった。
――しかし、翌朝。
「……あんたたち、こんなに食べて、よく死ななかったものねえ」
「……まあ、毎日、モンスター狩りで鍛えてるからな」
二人揃って、全身しびれを来たして寝込んでいた俺たちを、ジゼルが呆れ顔で看病している。
――察しのいい読者の皆様なら、もうとっくにお気付きであろう。では、ジゼル、正解をどうぞ。
「フグは体内に猛毒が詰まってるんだから、エミリアみたいな素人が料理したら、こんなことになるのは当たり前じゃないのっ!」
拳銃の試し撃ちが出来るということで、武器屋さんにやって来た、シモン・エミリア・ジゼルの3人。
ジゼルが全弾外れ、シモンが5の2という、ある意味お約束な展開ののち、エミリアに番が回ってきたのだが――。
「何で、二人とも逃げるんですかあっ!?」
エミリアが的に向けて拳銃を構えた途端、武器屋から逃げ出そうとしたジゼルとシモンを、エミリアはすかさず捕まえた。
「ここの作者が考える事なんて見え見えよっ! どうせ、突然乱射しまくって、一面血の海ってオチに決まってんだからあっ!」
「さもなくば、これ幸いとばかりに、恋のライバルであるジゼルの心臓目がけてズドンか」
「……私、そんなことしませんっ!」
「何か今、台詞が2秒ほど遅れたような気がしたが?」
「エミリア……あんた、まさかあたしを……?」
「だから、何で二人とも私を悪人に仕立てようとするんですかあ!?」
――などと、3人がガヤガヤやっていると、
「おい、何やってんだ!」
「とっとと撃てよ。こっちは待ちくたびれてんだぞ!」
と、後方で並んでいる連中の方から文句が飛んできた。
「すいませーん。今、撃ちますから」
エミリアはそう言うと、的の方へ向き直り、拳銃を構えた。
「えいっ!」
ドキューン!っという派手な音と共に銃口から撃ち出された弾丸は、見事、的の中心部に命中した。
「うにゃっ!?」
そして、的を貫通した弾は、たまたま武器屋の後ろを歩いていたミイを直撃した。
「……そうか。そういうオチがあったか」
「まあ、急所は外れてるから、別に問題ないしね」
「ふにゃ~~……」
「――何でこうなるんですかあっ!!」
今、俺・エミリア・ジゼルの3人は、商業区にショッピングに出ている。
正確には、ジゼルがエミリアを買い物に誘っているところに出食わして、俺もそれに巻き込まれたのだが。
「ジゼルさんって、ショッピングが本当に好きなんですねえ」
流行りの店を次から次へと案内するジゼルに対し、エミリアが感心して言った。
「あら、帝国の若者は、みんなそうよ」
ジゼルの言う通り、商業区は買い物を楽しむ若者たちでにぎわっていた。でも――。
「何事にも例外はあるだろ? 例えば、イレーネとか」
と、俺は反論した。実際、あの人がショッピングに夢中になっているところなど、想像も出来ない。
するとジゼルは、肩をすくめて、
「そうでもないわよ。ほら、あそこ」
そう言って、ジゼルが指差した方向を見ると――。
「ふっふっふー……。これだけ着飾れば、帝国の男どもは私のとりこよねー♪」
そこには、高級毛皮をまとい、大量の宝石やら貴金属やらでキンキラキンに身を飾り付けたイレーネが、含み笑いを浮かべながら、通りを闊歩していた。
――イレーネ……そこまでやると、かえって男たちは引くぞ。
樽の中に隠れて、まんまと海賊船に潜入することに成功した俺たちは、今、樽から出て格納庫へと降り立ったところだ。
樽にはまって、出られなくなってしまったジゼルを除いて……(汗)。
「お前、馬鹿みたいだぞ」
「そ、そんな呆れた顔しないでよ!」
しょうがないので、俺とエミリアで、ジゼルを樽から引っ張り上げる。
「いたた……! せ、狭くて、腕が抜けない……!」
ギシギシと、樽がきしむ。ついでに骨もきしんでいる。痛そうだ。
「えーい!」
「きゃあ!」
ドスン!
派手な音と共に、ジゼルは何とか樽から抜け出すことが出来た……のだが。
「だ、誰だ、貴様ら……ワプッ!」
俺たちの存在に気付いて駆け付けた海賊は、俺たちが手を出す前に、大量に鼻血を出して勝手に気絶してしまった。
そりゃそうだろう。強引に樽から引っ張り出されたジゼルは、その拍子に、ただでさえ露出度が高い服が破けてしまったのだから。
つまり、今のジゼルは、これ以上はないほどあられもない姿に。一言で言えば、全裸。
「うーむ……。俺たちとしても海賊たちを傷付けたくはないし、いっそこのまま海賊王の所まで――」
「真剣な顔しながら、こっちをじろじろ見るんじゃなーいっ!!」
海賊船に忍び込んだ俺たちは、続々やって来る海賊たちを、次々に倒していった。
そして、船長室のあるはずの、最上階の入口付近を守っていた海賊の一人を、倒した時だった。
「なあ、エミリア、こいつの顔、どこかで見たような覚えないか?」
「うーん……そう言われてみれば、そんな気が……」
「あたしも。どこだったかな……」
俺たちはずっと考えていたが――。
「……まあ、思い出せないってことは、どうせ大した事じゃないんだろ」
「まあ、シモンさんがそう言うのなら」
「それもそうね。そんなことより、とっとと海賊王を探しましょう」
そして俺たちは、気絶していた海賊をほっといて、先へ進んでいった。
今思えば、あの洞窟で拾ったロケットの写真の主だったような気もするが、何せ、拾ってすぐに港の少女に渡してしまったため、一瞬しか見なかった写真の顔を、俺たちがはっきりと覚えているわけがなかった。
イレーネが風邪で寝込んでいるというので、今晩は俺とジゼルで料理を作ってやることにした。
といっても、作ったのはほとんど俺なんだが。
「シモンさんが来てくれて、助かったわ。ジゼルに任せたら、どんなのが出てくるか、不安だったから」
俺たちが出した鍋料理を半分ほど腹に収め、一息ついたイレーネが、俺たちにそう言った。
「あーっ、イレーネさん、そういう言い方ないでしょ!」
「実際そうじゃない。1カ月前、自分で作ったホットケーキ1枚でお腹を壊して、一晩中うんうんうなってたのは、どこのどなた?」
「うっ……」
「2週間前、たまたま宮殿からやって来た使者にクッキーをプレゼントしたそうね。その人、3日ほど仕事休んだそうよ」
「た、たまたま風邪ひいた……とか」
「そうそう。昨日、皇帝陛下から宮中の職員全員にお触れが出たわよ。今後一切、ジゼル皇女の料理は、一口たりとも食すべからずって」
「ううっ、フランツまで……」
「そこまでひどいと、逆に食べてみたいような気もするが」
「シモンさん、やめときなさい。正直言って、命にかか――」
と言い終わらないうちに、イレーネは、その場でバタリと昏倒してしまった。
そういえば、さっきイレーネ、ジゼルが切ったネギを口にしたような……。
「ここまでの殺傷力とは……。これは、対モンスター用武器になるな」
「そんな武器いらなーいっ!!」
俺が、自分の部屋のベッドに寝っ転がっていた時だった。突然、誰かが部屋のドアをトントンとノックする音が聞こえた。
「誰だろ……?」
俺の部屋に訪ねてくる人なんて、滅多にいない。せいぜい、隣を住まいにしてるエミリアぐらいのもんだろう。
俺は、ドアを静かに開けた。ドアの向こうにいたのは、やっぱりエミリアだった。
「やあ、エミリア」
「…………」
エミリアは何も答えない。暗がりでよく分からないが、ただ、彼女の表情からはどうも覇気が感じられない。
「どうしたの……?」
俺は、改めて問いかけた。すると、エミリアは急に、俺に抱き着くように倒れかかってきた。
「シモンさん……」
部屋の明かりが、エミリアの顔を照らす。そして俺は、彼女の顔色が悪いのに気が付いた。いや、悪いなんてもんじゃない。血の気が失せて、このまま死んでしまいそうな表情だ。
「大丈夫か! どこか悪いのか!?」
なおも問い質す俺に対し、エミリアは、俺の目をじっと見つめ、こうつぶやいた。
「赤ちゃんが……産まれそう……」
――俺たちは、まだそこまで進んでねえって! つーか、このあとだろうがっ!!
遂に結ばれた、俺とエミリア。しかし――。
抱き締めるエミリアの背中に、ぼおっと一つの紋章が浮かんだ。
「エミリア!……これは……」
「気付いて……しまったんですね」
エミリアは、頭を俺の胸にもたれかけたまま、俺に語りかけた。
「感情が高ぶったり、体温が上がると、こうやって浮き出るんです。――私が、アイザックの愛弟子だった証しが」
――エミリア、『メンアットワーク!3』と話が混線してるぞ。
遂に結ばれた、俺とエミリア。しかし――。
抱き締めるエミリアの背中に、ぼおっと一つの紋章が浮かんだ。
「エミリア!……これは……」
見間違えようがない。あの堕天使たちの体に付いていた紋章と同じ物だ。
「気付いて……しまったんですね」
エミリアは、頭を俺の胸にもたれかけたまま、俺に語りかけた。
「感情が高ぶったり、体温が上がると、こうやって浮き出るんです」
「エミリア……」
まさか、エミリアが、堕天使……?
「そして……これを見られてしまった以上……」
バキューン!
「……生かしておくわけにはいきません」
エミリアの手に握られた拳銃の銃口から、硝煙が上がる。
「さようなら、シモンさん。……本当に、好きだった人」
――BAD END
周りに俺以外、誰もいないことをいいことに、俺たち亜人を侮辱する言葉を吐き続けるドレスラー。
こいつを斬り捨てんと、剣のつかに手をかけた瞬間――ジゼルに止められた。
「ドレスラー公、少々、お口が過ぎるのではありませんか?」
「……確かに、シモン殿は帝国兵士ですからな。あんな亜人でも」
「ご理解頂けて、幸いですわ」
「……失礼させて頂く。何かと忙しいのでね」
「ジゼル、なぜ止めたっ」
「馬鹿。お尋ね者になるつもり? あたしたちを置いて……」
などと、ひそひそ声で言葉を交わす俺たちには気も留めず、ドレスラーは憤然と去っていく。
「……亜人の血の混じった、小娘が!」
しかし、ドレスラーが去り際に吐き捨てた暴言に――ジゼルがキレた。
…………。
「……おい、『殺していい奴なんていない』んじゃなかったのか?」
血の気の引いた俺の言葉に、ジゼルは冷徹に答えた。
「皇室侮辱罪よ。極刑は当然だわ」
血の海に沈む、ドレスラーの変わり果てた姿を前にして、俺は、ジゼルだけは敵に回してはいけないと、固く誓った。
俺たちは、聖地の奥に潜んでいたモンスターを撃退した。
そして、イレーネにいち早く報告するため、ビザンティアに引き返そうとした、ちょうどその時だった。
「――ありがとうございました、皆さん」
突然、背後からそんな声がした。
反射的に振り返った俺たちが見たものは、白の法衣を身にまとい、一人立っていた、エヴァの姿だった。
思わず、俺は叫んだ。
「エヴァ、どうしてこんな所に!?」
ここは、女の子が一人で来れるような所ではない。それに、エヴァはビザンティアで、俺たちの帰りを待っていたはずではないか。
「先日、遺跡から発見されたばかりの『どこでもドア』を使いました」
「納得できるかっ!!」
リリスに、とどめの一撃が決まった! リリスの巨大な体が、大きくぐらつく。
勝利を確信したシモン。しかし、そのシモンを道連れにせんと、リリスの腕がうなりを上げてシモンを襲う。
普通なら、簡単にかわせただろう。だが、リリスに「イブリンの気配」を感じたシモンの一瞬のちゅうちょが、命取りとなった。
リリスの腕に叩き付けられたシモンの体が、リリスと共に、奈落の底へといざなわれる。
「シモンさん!」
叫ぶエミリア。エミリアの手がシモンへと伸びる。
そして、エミリアはしっかりと掴んだ! シモン――の頭にあったマジックハットを。
「え……?」
一瞬、何が起こったのか分からなかったシモンをよそに、エミリアとジゼルが歓喜の声を上げる。
「やったーっ! アクセサリー『マジックハット』、取れましたーっ!」
「良かったー。これがあるとないとじゃ、防御が大違いだもんねー」
「おーい!……俺はどうなるんだあーっ!?」
「いいじゃないですかー。どうせここで、シモンさんはお役御免なんですからー」
「そうそう。せいぜい10年間、エヴァと乳繰り合ってなさーいっ!」
「嫌だあああぁぁぁぁぁぁ…………」
断末魔の叫び(?)を残して、シモンは奈落へと消えていった。
「さーってと……」
エミリアは、台本をパラパラとめくる。
「次はイレーネさんの自決を止めるシーンですよね」
「そうだったわね。エミリア、目薬持ってる?」
「はい、これです」
「サンキュー。やっぱり“泣き”のシーンにはこれが必要よね」
「早く行きましょう。イレーネさんが外で待ってます」
そして二人は、イレーネの待つ宮殿前へ走り出した――。
銃声が響く。しかし、その時、拳銃はイレーネのこめかみからはじき飛ばされていた。
「イレーネさんっ!」
「……ジゼルさん」
ビザンティアが炎に包まれる中、拳銃自殺しようとしたイレーネを止めたのは、ジゼルだった。
「ダメ……死んじゃ嫌!」
――その頃、民衆が避難していた、小高い丘の上では。
「う……ううっ……ビザンティア……万歳……」
ジゼルがはじき飛ばした拳銃の流れ弾は、丘にいたテオドールの心臓に、ものの見事に命中していた。
「にゃーーーーっ! 親方っ!……しっかりするにゃーーっ!!」
かくして、ビザンティア帝国は国一番の職人を失った。
再興の道は遠い――。
エミリアに教団過激派調査の助っ人を依頼すべく、アラハバクに向かったあたしたち。
しかし、アラハバクに着いてみると、先手を打った過激派の刺客が、ちょうどエミリアを始末しようとしていたところだった。
まさに危機一髪だったが、あたしとエミリアたち3人で、どうにか連中を追い返した。
「ありがとう、ジゼルさん……」
「どう致しまして」
「ところで……その子は?」
と、エミリアはあたしの傍らにいたロイに目を向けた。
「ああ、あたしの子供。もちろん、シモンとのね」
「そうですか……って、何でロイがジゼルの子供になってるんですかあっ!?」
すると、ロイは意外そうな表情で言った。
「あれっ? お父さんと結ばれたヒロインが、僕のお母さんってことになるんじゃないの?」
10年ぶりに、あたしはアラハバクを訪れた。
エミリアの尽力により、見事に復興を遂げたと聞いてはいたが……。
コロニーを埋め尽くすように、立ち並ぶビル。
ビルのほとんどは、家電店、PC専門店、ゲーム店、同人ショップ。
そして、ポスター片手に店を走り回るマニアたち。
「――って、何なのよ、これはっ!?」
するとエミリアは、笑顔であっさりと答えた。
「業者の誘致に随分苦労したんですよ。やっぱり、アラハバクといえば電気街ですから」
「それは、アキハバラでしょうがっ!!」
10年ぶりに訪れたアラハバク。確かに、全てが元通りになったと聞かされたはいたけど……。
「……あのねえ、エミリア」
「何ですか、ジゼルさん?」
「念のため聞くけど、あそこにいる二人は?」
「お爺様……じゃなかった、長老とルカですけど、それが何か?」
そう。そこには10年前に焼き殺された人たちが、何事もなくコロニーで生活していた。
確かに元通り……って、元通りすぎるわよ!
「どうやったら、10年前に死んじゃった人たちを生き返らせられるわけ!?」
「ビザンティアから持ち帰った気付け薬と薬草を使ったら、皆さん、簡単に復活しましたよ」
「へーっ、さすがRPG……って、んなわけあるかーっ!!」
10年ぶりに訪れたアラハバク。
あの焼け野原から、たった10年しか経っていないのに、コロニーは元の姿を見事に取り戻していた。
エミリアを除いて、住民は完全に入れ替わっていたけど、それは望むべくもない。
「たった10年でここまで……。エミリア、一体何をやったの?」
「大した事はしてません。ただ、聖地にいたドラゴンにお願いしただけで……あら、どうしたんですか、ジゼルさん? 疲れた顔して」
「はあ……。もうツッコむ気力も失せたわ。ドラゴンボールとは、何てお約束な……」
10年ぶりに訪れた、帝都ビザンティア。その居住区には、私とシモンさんの部屋が、10年前のあの頃の状態のままで、残されていた。
「フランツに頼んで、残してもらったのよ」
ジゼルさんが、そう説明した。
「これなら、シモンがいつ帰ってきても、大丈夫にゃ」
そうミイが付け加える。まるで、シモンさんの死を信じ切れない、自分自身を説得するかのように。
「でも……」
私は、どうしても納得がいかない事実を、ジゼルにぶつけた。
「ん、何?」
「10年前の反乱で、焼け落ちたままの状態で残すことはないと思いますが」
――“火災現場”をそのまま残してもらっても、嬉しくありません!
「そういえば……あのドングリ、どうなったんだろう?」
エミリアはふと、シモンと一緒に植えたドングリのことを思い出した。
あれから10年。ひょっとしたら、今頃は立派な木になってるかも――そう思い、エミリアはあの思い出の場所に行ってみた。
「これは……」
しかし、植えた場所にあったのは、一つの切り株だった。
「エミリアさん、どうしたの?」
と、そこへイレーネがやって来た。
「イレーネさん、この切り株、ひょっとして……」
「あら、エミリアさん、知ってたんですか? この木のこと」
そして、イレーネは説明した。
「7カ月ほど前に切られたのよ。ここの木に登って遊んでいた女の子が落ちる事故があって、危険だからって。で、その子、ずっと昏睡状態だったんだけど、つい先日――」
――うぐぅ、それじゃ『Kanon』だよ。
ロイが地下宮殿で友達と隠れんぼをしているうちに、その友達が行方不明になってしまい、大騒ぎになった。まあ、その友達は何事もなく見付かり、ほっと一安心――なのだが。
「ところで、フランツ」
ジゼルは、皇帝フランツに聞いた。ここは宮殿3階で、他には誰もいない。
「何、姉さん?」
「もう地下宮殿は、調査も終わって用済みだったんでしょ。何で閉鎖しないのよ? 開けっ放しにしてるから、あんな子供が迷い込んだりするんじゃない」
まして今では、宮殿内は、皇帝の私邸に当たる3階より上を除いて一般市民に開放されている。こういう事態は想定されて然るべきなのだ。
「……まあ、無用心だったのは認めるが、しかし、今でも地下宮殿は重要な存在だと思うが。特に、姉さんたちにとっては」
「あたしたちにって……どういうこと?」
「あそこのモンスターはさして強くないから、『全員防御状態で放置』で物防をてっとり早く上げるには、ちょうどいいと思うんだが」
――陛下、作者はそんな“裏技”は使いませんって。
「いくら俺でも、美術品は専門外なんだがなあ……」
セリーヌが床に落としてバラバラになった花瓶を前に、親方は困ったように頭をかいた。
「親方は、『この俺に作れねえ物はねえ』といつも豪語してるにゃ」
「お願いします! もう、おじ様だけが頼りなんです!」
セリーヌも、一生懸命に頭を下げて頼み込んだ。
「そこまで言われちゃなあ……。やるのは構わんが、出来は保障しねえぞ」
「ちょっとの間だけフランツを誤魔化せたら、それでいいの!」
「そうか。……だが、こいつを直すとなると、ちょっとばかり、材料が足りねえな」
それを聞いて、エミリアは、
「材料なら、私たちがモンスターから狩り集めてきます。何が必要なんですか?」
「それじゃ、早速頼まれてくれるか? 取りあえずは、麻糸とオイルと火薬と曲がったネジと竜の角だ」
「……あんた一体、何を直すつもりなのよっ!?」
「親方~、ギックリ腰のお薬、持ってきたにゃ~!」
「おおっ、待ってたぞ、ミイ。……うわっ、何だ! この匂いは」
「ううっ……滅茶苦茶、臭いにゃ……」
「ま、まあ『良薬鼻に臭し』というしな」
「親方、それも言うなら『良薬口に苦し』にゃ」
「実際、苦い薬はにおいもきついだろうが。……まあ、貼るだけ貼ってみるか」
「治るといいにゃ、親方」
――しかし、翌日。
「ミイ! 全然効いてねえじゃねえかっ!……いてて」
「う~ん、おかしいにゃ~」
「ミイ、本当にこれは『洞窟ヨモギ』なんだろうな?」
「いや、それがにゃ、『洞窟ヨモギ』は結局、見付からなかったのにゃ。それで代わりに、洞窟に転がってたジェリー(毒吐きスライム)のウ○コをすり潰してみたのにゃ」
「アホかーーっ!!」
結局、親方はギックリ腰と、体に染み付いたジェリーのウ○コの匂いのダブルパンチで、2週間は仕事にならなかったそうな。
えー、こちらは海賊島。
ひょんなことから、アンナと「どっちがお姫様らしいか」料理対決することになったジゼル。
果たして、どうなることやら――。
あっ、今、結果が出たようです。それでは、司会役のエミリアさん、発表をどうぞ!
「はい。試食役の海賊さんを5人ノックアウトさせた、ジゼルさんの勝ちです!」
ははは……何しろ、たった一口で3人も失神しましたからねえ。何でも、一人は重体だとか。
おおっ、ジゼル、感激の余り、泣いております。
「嬉しくなーーーいっ!!」
全てが終わってから数日後。
エミリアはアラハバクに帰り、シモンの墓の前にいた。
そして、いつの間にか、その「墓の主」がエミリアの背後にいた。
「シモンさん……私たちのこと、これからも、見守って下さいね」
「見守るだけで、いいのかい?」
「はい」
……はい?
エミリアは、傍らに置いていたサブマシンガンを手にし、さっと振り返った。
「10年間も妻子をほったらかしにして、どこをほっつき歩いてたっ、この裏切り者ーっ!!」
ガガガガガガガガガガ……!!
――こうして、シモンとエミリアの10年ぶりの再会は、呆気なく終わった。
強力なモンスター3体に襲われ、死を覚悟した時、あたしを助けてくれたのは――シモンだった。
「……ふう、危ないところだったな、ジゼル」
「……バカ。遅いわよ!」
「間に合ったんだから、いいじゃねえか」
「間に合ってなんか……ないわよ……」
「……?」
「……どれだけ経ったと思ってるのよ」
「大丈夫。まだまだ10代で通じるぜ」
「見かけはね……。でも、今のあたしは3人の男の妻で、子供5人の母親なんだからーっ!」
「ウソーーーッ!?」
「エヴァ……俺は、人間の世界に帰るよ」
世界樹の若芽と化したエヴァに対し、シモンは告げた。
「君は俺に言った。あの世界は汚れている。自分が手を出さなくても、そう遠くない未来に自ら滅びに至ると」
エヴァは、何も答えない。そもそも、この声が彼女に届いているかも、分からない。
「でも……たとえそうだとしても、俺は、その汚れた世界で、生きていくよ」
そして、シモンは振り返った。遥か頭上から、真昼の太陽の光がシモンを照り付ける。
「俺は、人間だから」
シモンは、その太陽の方角へ向かって、歩き始める。もうここに戻ることはない――そんな決意を胸に抱いて。
「さよなら……」
そして、帝都に戻ったシモンは、最愛の女性イレーネと共に、いつまでも末長く、幸せに暮らしたそうです。
めでたしめでたし。
「「「――って、(私/あたし/ミイ)の立場はーーーーーっ!!!!」」」
旧世界末期、地球の文明度を調査するため、1機の宇宙船が飛来した。
しかし、宇宙船はトラブルにより、極東の島国に不時着。頭に猫耳を付けた女性乗組員は途方に暮れるが、やがて、便利屋を営む地球人の男性と運命的出会いをする。
この男性の協力により、宇宙船は無事修復されたが、男性と恋に落ちた乗組員は、結局、母星には帰らず、男性と共に地球に永住することになった。
それから約2年後、このカップルは一人の女の子を授かった。その娘にも、母親と同じ猫耳があったことは言うまでもない。
「――というエピソードが、先日遺跡から発掘されたこのCD-ROMに記録されていました。これは、猫耳族のルーツにまつわる謎を解き明かす、大変な発見といえるでしょう」
「うにゃー。それじゃ、ミイのご先祖様は宇宙人だったのにゃ?」
――イレーネさん、それは『わーきんぐDAYS』のゲームCDです。
それは旧世界末期、とある極東の島国で起きたエピソード。
失敗ばかりを繰り返す某天才科学者が、ある日、「動物が人の言葉を話せるようになる」という薬を開発した。
早速その科学者は、友人が拾って面倒を見ていた3匹の猫に、その薬を試そうとするが、恋人に止められ断念。しかし、別の友人がその薬を誤って猫たちに与えてしまう。
その夜、科学者の恋人は、思わぬものを目にする。それは、薬の効果によって、「人の言葉を話せる」どころか、「人の姿になってしまった」3匹の猫たちの姿であった。
もちろん、猫たちは姿は人でも、しっかり猫耳・猫尻尾を実装していたことは、言うまでもない。
「――という、猫耳族の起源を解き明かした話が、宮殿の宝物庫に保存されているこの古文書に、この通りイラスト付きで記述されていたんだ」
「うにゃー、これは凄いのにゃー」
――お言葉ですが陛下、それは『がくパラ!! ビジュアルファンブック』であります。
あたしの自慢の弟・フランツ。確かに歴史に残る名君なのは間違いないんだけど、こと恋愛となると、ちょっとねえ……。
というわけで、今回はそんなお話。
「姉さん、ちょっといいかい?」
3日ぶりに仕事先から宮殿に帰ってきたあたしを、フランツが呼び止めた。
「何、フランツ?」
「いきなり本題で悪いんだけど、姉さんは、今の帝国の人口の状態を、どう思う?」
「どうって……どうにか現状維持ってとこだと思うけど」
帝国勢力圏から堕天使が一掃されたのちも、かえって数を増やし続けるモンスターの脅威を前に、出生率が伸びない人類は、世界全体が過去のいさかいを捨て、共通の敵・モンスターを前に一致団結。その結果、どうにか現状の人口レベルを保っているのが実情である。
もっとも、イレーネさんによれば、『旧世界が滅んだ最大の原因は、人類が増えすぎ、かつ力を持ちすぎたため』らしいから、人口が増えも減りもしない現在の状況は、長い目で見れば、実はいい事なのかも知れない。何より、人類同士は平和なのだし。
とは言え、現状に満足できるほど、あたしたち人間は出来ていない。
そのため、フランツも人口増加のために、いろいろと施策を出してはいる。
「以前公布した『恋愛開放令』の効果は、どうだろうか?」
「うーん……正直言って、あんまり芳しくないわね」
『恋愛開放令』。ぶっちゃけて言えば、「これからは、夫婦・恋人の枠にとらわれず、どうぞご自由におヤんなさい」という勅令。狙いはもちろん、産めよ増やせよ。
しかし、かつての教勢は衰えたとは言え、今でもグリーナリー教徒が国民の半数を占めるお国柄である。いくら全国民の敬愛を一身に受ける皇帝陛下のお言葉とはいえ、おいそれと「はい、これからは自由にヤります」とはいかないのは当然である。
「そうか……。となると、やはり皇帝自ら、国民に範を示すしかなさそうだな」
「…………」
フランツの言いたい事が、何となく分かったような気がした。
「……姉さん!」
フランツが両手をあたしの両肩にかけた。真剣な眼差しが、あたしの眼前に来る。
「ま、待って、フランツ! いくら何でも、姉弟(きょうだい)同士で、そんなっ!」
そうよっ。それに、あたしには既にシモンという人がっ!
「お願いだっ! 一晩だけでいい。シモンを貸してくれないか!」
…………へっ?
…………。
「あっ、セリーヌ。フランツが階段で足を滑られて怪我したみたいだから、あと、手当てしてあげて」
「は、はい……」
ボロ雑巾にしたフランツをメイドに任せて、あたしは、本気で姉弟の縁を切ってやろうかと思った。
「ぐあっ!……」
――シモンはリリスから120のダメージを受けた。
「まずいっ。このままでは体力がもたない……。ジゼル、回復アイテムを!」
「オッケー。ほらっ!」
――ジゼルはシモンにカレーライスを使った。
「…………」
――シモンは1000のダメージを受けた。
「おい、ジゼル……そのカレーライス、まさか……」
「今の? こないだ、あたしが作った奴だけど……って、シモン、ちょっと!?」
――シモンは気絶した。
「エミリア、気付け薬は!?」
「もうありませーん……キャーーーーーッ!!」
――パーティーは全滅しました。
それは、シモンたちが久しぶりに、海賊島に遊びに来た時だった。
「よう、ジゼル! 俺と賭けをしねえか?」
ギャンブルにかけては、(特にジゼルには)百戦百敗の海賊王グスタフが、また性懲りもなく、ジゼルに勝負を挑んできた。
これには、ジゼルもさすがに呆れ顔で、
「……おじさん、それって“勇気”じゃなくて“無謀”っていうの、知ってる?」
「この俺様をなめてもらっちゃ困るぜ。今日は、絶対に勝てる気がするんだ」
「その台詞、昨日も言ってたと思うけど?……まあいいわ。で、今日は何の勝負?」
「おお。そこにいる手下ども二人にジャンケンをさせるから、どっちが勝つか当てるんだ。左の赤い頭巾の方が勝ったら俺の勝ち。右の青い頭巾の方が勝ったらジゼルの負け。いいな? よーし、では早速――」
「待った! それって、よく聞いたら、どっちに転んでもおじさんの勝ちじゃない!」
「うーん……じゃあ、このサイコロで丁半賭博といこう。丁が出たら俺の勝ち。半が出たらジゼルの勝ち。それならいいだろう?」
「どうせ、そのサイコロ、丁しか出ないように細工してあるんでしょ?」
「……な、なら、このコインの裏表を当ててくれ。今度はジゼルがどっちか決めていい。さあ、どっちにする?」
「先に確認するわ。そのコイン、どっちが表なの?」
「…………」
――ギャンブルに弱いグスタフは、イカサマも弱かった。
俺がアラハバクに帰り、エミリア・ロイと共に暮らすようになってから、5年が過ぎた。
毎年のようにアラハバクに行商にやって来ていたミイが、ここ2年ほど姿を見せないので、先日やって来た別の行商人にミイのことを聞くと――。
「ああ、ミイさんでしたら、転職されましたよ」
「転職? 何に?」
「…………」
しかし、行商人はそれ以上、何も答えなかった。
『ミイの夢は、行商で稼いで、うんと大きなお城を建てて、そこのお姫様になることなのにゃ!』
そんなことを言っていたミイの身に何が起こったのか。
俺は、ミイの現状を調べるべく、久しぶりにビザンティアにやって来たのだが――。
「……シモンさん!」
城門でばったりと出会った相手はイレーネだった。
「やあ、イレーネ。ちょっとミイの様子を――」
そう言いかけた途端、イレーネが慌てて俺の口を塞ぎ、辺りを見回した。
「……良かった。誰にも聞かれてなかったみたいですね」
「うぐぐ……な、何だよ、いきなり」
「シモンさんはご存知なかったんですか? 帝都でミイ様を呼び捨てにするなんて、何と命知らずな」
「ミイ様って……?」
一体、ミイの身に何が……?
「一昨年、ミイ様とミュウ様との間に、お子様がお生まれになったのです。それも五つ子です」
「五つ子だと!?」
亜人も含めて人類の出生率は相変わらず低く、しかもミイとミュウは、ただでさえ子供が出来にくい猫耳族だ。そのミイが五つ子を産むなんて、にわかには信じ難い話である。まさに奇跡……。
「イレーネ、ひょっとして……」
「百聞は一見に如かずと言います。一緒に教会前に来て下さい」
教会前は、大勢の信者たちでごった返していた。そして、教会をバックに信者たちの歓声に答えていたのは――白の法服に身を包んだミイだった。
「ミイを信じるのにゃー! ミイの力で、みーんな子宝に恵まれるのにゃー!」
ミイの一言に、老若男女が一斉に「にゃーっ!」と叫ぶ光景を前にして、俺は唖然とした。異様としか言いようがない。
「エヴァ様を失い、新たなる救世主を求めていた信徒たちは、奇跡の体現者たるミイ様を自分たちの救世主に祭り上げたのです。今やミイ様は、グリーナリー教改め『にゃーにゃー教』の教祖様です」
教団代表の座をミイに奪われたイレーネが、感情を押し殺し、淡々とそう語った。
――つまりミイは、「お城のお姫様」ならぬ「教団の教祖様」として、夢を実現してしまったわけか……。
エミリアの主張――。
「パッケージの一番前を飾る、この私がメインヒロインに決まっています!
子供に恵まれたのも、私だけじゃないですか」
ジゼルの反論――。
「それを言ったら、葵(MaW2)や瑞穂(MaW3)だってメインヒロインになるじゃない。
皇族という高貴な血筋に、この自慢のナイスバディ。メインヒロインは、当然あたしよね」
ミイの意見――。
「時代はナイスバディより“つるぺた”なのにゃ。
シモンと最高5回もえっちした、このミイがメインヒロインにふさわしいのにゃ!」
イレーネの言葉――。
「悪いわね、ジゼル。ナイスバディなら、この私の方が上よ。
お子様にはどう頑張っても手に届かぬ、この大人の魅力。答えは明らかね」
フランツの妄言(?)――。
「皇帝――これに勝る者がどこにいるというんだい?
BlueImpactの異名を持つStudio e.go!にとって、ヒロイン=女性という仮定は通用しないよ」
セリーヌの発言――。
「あの『エーベンブルグの風』だってリメイクされました。
そうです! 今、時代の最先端は“メイド”なんです!」
エヴァの台詞――。
「時代が何でしょう。世の男どもを虜にするのは、昔も今も“妹”と相場は決まっています。
メインヒロインにして、敵方の首領――『ベイグランツ』は、私の物語なのです」
……このまま放っておいては、収拾は着きそうにありません。
シモンさん、ここはあなたの口から、ガツンと言ってやって下さい。
「ふっ……、誰がメインヒロインかなど、考えるまでもない。
それは――我々の生みの親、山本和枝大先生様だっ!」
「…………」
シモンを除き、全員“真っ白な灰”になったところで、このSSもお開きとさせて頂きます(笑)。